君と竜が望んだ世界
 ちょうど今度はロイの事を聞こうとしたとき、昼食を済ませた生徒達の騒がしい声が聞こえ、授業開始の鐘が鳴り響いた。


「ちぇーっ。ロイの話はお預けか。後でしっかりと、詳しく、話せよ!」


 腰に両手を当てながら、自分の頭一つ程上にあるロイを下からのぞき込むようにして詰め寄る。


「詳しくも何も、簡単な話さ。
……ブブカで親友も部下も分かち合った仲間も失った俺は、しばらく絶望と悲しみと喪失感で埋め尽くされながら軍で過ごした。
……二年後、国との軍人契約期間四年の満期を経て退役。直後学長の薦めで教師になりましたとさ。終わり」


 何年もたって心の整理もついているのか、多少の憂いを感じるものの、何の変哲もない普通の過去の話です、という風に軽く話した。



「そうか」

 ロイがそれ以上言葉にせず、感情を表すこともないな、と感じ、今更自分が言う事なんて何もない、と短い返事を返した。



「結局俺たちはまた同じ場所で過ごすんだな。不思議な縁だ。
 今度は俺が上司だけどな」

 憂いを払拭した口調でふざける。


「俺が教師ごときを上司だと思うわけも認めるわけもないだろ。
 そもそも学ぶ事なんてないだろ、今更。それに、ほら、見ろ」


 襟の裏側を見せた。先日学長からもらった、特権を持つ証(あかし)のバッジだ。

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