君と竜が望んだ世界
 二人ずつで刀剣を交える生徒の元を渡り歩きながら、弱点やアドバイスをするロイ。
 そんな彼について周るハーヴェイ。


 ハーヴェイは軍学校や戦闘の訓練をする教育機関というところに通ったことがなかったので多数のペアが各所で刀剣を振り回し、手足に身体を使って訓練している景色を物珍しそうに見ていた。


 クラスの人数が奇数だったこともあり、新入初日の説明がてらロイ先生自らが手ほどきをする、という建前の元、ハーヴェイは大人しく従っていた。


   ――◇――

 しばらくして全員を一通り周り終えたロイがハーヴェイを端の空いたスペースに手招きして呼んだ。


「こっちだ、ハーヴェイ。そろそろ俺たちもやるか」


「よーし、どれほど強くなったのか見てやろう」


 練習着を持っていなかったハーヴェイは制服の上着を脱ぎ捨て、シャツの首周りを緩めてから最後に袖をまくった。

 すぐ準備が整い、目視で伝える。それに気づいたロイはハーヴェイに腕輪を渡し、付けるよう言った。

「付けとかねぇと、生徒の目があるからな。これでも一応各種戦闘の専門家(スペシャリスト)だからな」


 「協力よろしくっ!」と満面の笑顔を見せて言いながら腕まくりをした運動着姿のロイの左手首には、既にリングが装着されていた。


 その手首の物と瓜二つの銀色のシンプルな輪っかを、何も聞かずとも納得したように受け取る。


「制御リング……。便利な機械も開発されたもんだな。十年前とは大違いだ」
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