君と竜が望んだ世界
「痛ってー……。
全身にビリビリくるわ、コレ」
目に見えない何かに刺されるような、そんな張りつめた緊張感を、静寂を、破ったのはハーヴェイ・ゼルギウスだった。
見開いた彼の両の目と顔は、痛そうと言うより純粋な驚きと感嘆を出し、あっけらかんとした声で息を止めたかのような野次馬たちに空気を解放した。
「おいおい、いくら何でも“止(と)める”ことはないだろ、受け“止める”ことはよ。せめて受け“流す”くらいにしろよ」
ハーヴェイから踵(かかと)を下ろして直立姿勢に戻しながら“止める”、“流す”、と強調するロイが呆れたように言う。
「いや、折角ロイの飛躍を感じられるんだ。このくらい平気だろ」
低く固まっていた体制を開放しながら腕を回し、肘を曲げ、軽く節々を確かめる。
「……お前の身体の心配して言ってるわけじゃねぇよ俺は!
ちっ、俺の十八番のひとつでもある渾身の『一撃入魂!必殺!元軍人教師ミラクルキック!』を、術力も身体強化もせずに生身で軽く受け止めやがって」
恨みがましい目つきで不思議な名称を掲げながら言った。今し方放った重い一撃の事だろう。
何のことは無い。破壊力抜群のただの後ろ回転蹴りだ。
大層な名前を付けるのに関しては昔から変わらないようだ。そしてそのネーミングセンスも。
一方、戦闘に特化し、現役軍人以上に鍛え抜かれた大きな体躯から繰り出されたロイの攻撃を、生(せい)を受けて三十年とはいえ、それなりに鍛えた、平均身長程度の学生にしか見えない生身のハーヴェイが、苦痛の色も焦りも微塵も見せずに飄々としている。
「くっそー。抑制数値ごまかしとけば良かったぜ。そもそも“同条件”って時点ですでに俺は不利じゃねぇか?」
そんなハーヴェイに対して小声で不満を呟く。
全身にビリビリくるわ、コレ」
目に見えない何かに刺されるような、そんな張りつめた緊張感を、静寂を、破ったのはハーヴェイ・ゼルギウスだった。
見開いた彼の両の目と顔は、痛そうと言うより純粋な驚きと感嘆を出し、あっけらかんとした声で息を止めたかのような野次馬たちに空気を解放した。
「おいおい、いくら何でも“止(と)める”ことはないだろ、受け“止める”ことはよ。せめて受け“流す”くらいにしろよ」
ハーヴェイから踵(かかと)を下ろして直立姿勢に戻しながら“止める”、“流す”、と強調するロイが呆れたように言う。
「いや、折角ロイの飛躍を感じられるんだ。このくらい平気だろ」
低く固まっていた体制を開放しながら腕を回し、肘を曲げ、軽く節々を確かめる。
「……お前の身体の心配して言ってるわけじゃねぇよ俺は!
ちっ、俺の十八番のひとつでもある渾身の『一撃入魂!必殺!元軍人教師ミラクルキック!』を、術力も身体強化もせずに生身で軽く受け止めやがって」
恨みがましい目つきで不思議な名称を掲げながら言った。今し方放った重い一撃の事だろう。
何のことは無い。破壊力抜群のただの後ろ回転蹴りだ。
大層な名前を付けるのに関しては昔から変わらないようだ。そしてそのネーミングセンスも。
一方、戦闘に特化し、現役軍人以上に鍛え抜かれた大きな体躯から繰り出されたロイの攻撃を、生(せい)を受けて三十年とはいえ、それなりに鍛えた、平均身長程度の学生にしか見えない生身のハーヴェイが、苦痛の色も焦りも微塵も見せずに飄々としている。
「くっそー。抑制数値ごまかしとけば良かったぜ。そもそも“同条件”って時点ですでに俺は不利じゃねぇか?」
そんなハーヴェイに対して小声で不満を呟く。