君と竜が望んだ世界
  ――◇――


「それにしても啖呵切るだけあって、強くなったな~。流石、二十二歳という若さで士官学校を卒業した元エリートなだけある」


 蹴り飛ばされた怪我など既に完治したロイと隣を歩くハーヴェイ。


 廊下を歩きながら喋る二人は、ここ、ネストリ学園では教師と生徒である。

 端から見てもその図だ。ロイはいつもと何ら変わりなく堂々と足を運んでいるし、ハーヴェイはようやく学園に慣れたといった様子だ。


「よせよ、その言い方。別に飛び級したわけじゃないんだ。

 飛び級なんてモノはお前みたいな超級の奴らのためにあるものだ。俺はただ単に人より早く軍学校に入学したから人より早く卒業しただけだ」


 だがその会話は、傍目にうつる、教師ロイ・アシュレイと生徒ハーヴェイ・ゼルギウスという二人の上下関係を覆すような口調と内容だった。


「俺さ、バイルシュタインがこんなに整った国だとは思ってなかったんだよな、最近まで」

 不意にハーヴェイが口を開いた。

 ロイは訓練所の隣、教師用に用意された部屋の一つの鍵を開けながら、静かに耳を傾ける。


「周りの色んな国に行ったことあるから、違いがよくわかるんだ」


 自室に入り、飲み物が入ったグラスをハーヴェイに渡し、腰を落ち着ける。

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