君と竜が望んだ世界
 ハーヴェイは教育という制度について考えながら、思い出しながら、ぽつりぽつりと話した。


──ここ、バイルシュタイン帝国の就学システムは、乱れ、荒れ、傾いている周辺諸国に比べ、かなりしっかりしていた──


「六歳にも満たない小さい子供は生きるために食べ物拾ったり家事したり……」



──バイルシュタイン帝国では六歳になると六年間初等部で学び、十二歳からは三年間、中等部へと進級する──


「大きくなったら狩りやら畑仕事やらさせられる。大きくなったっていってもまだ子供なのに」


 ロイは戦地以外でこの広い帝国から出たことがなかった。故にハーヴェイの言葉を理解は出来ても、想像するのは難しかった。


──教育制度がしっかりしている事もあり、十五歳になると多くは各々の望む分野がある学園の三年制の高等部(一部)へ進む。
 大抵はそこを卒業した後は、自由に生きる──



「俺らがここでのんびり過ごしている間にも、戦いにかり出されている少年少女たちがいる」 


──帝国では十五歳から十七歳までは、高等一部生として各自興味を持つ学科で、平和に学んでいる。

 一方、他国では同年齢の子供たちは戦争の道具として扱われている──「同じ“人”なのにな……」

 ハーヴェイの言葉はここで途切れ、ロイの心に重く入り込んだ。
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