王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐



全員と目配せし、ベリルは角笛に口をあてがう。
一瞬だけ、淡く光った様に見えた。

…予想外に、何の音もしなかった。
鳥笛や犬笛の様に、特殊な周波数で聞こえる類いの物らしい。


「なんも来ねぇじゃん?」

「!バジルさん!
あんた何でいつもそんなに空気読めないんですっ?」


なかなか変化の無い様子に口を開いたバジルに、容赦無いグレード。

一人の時は妙に大人びてると思ったものだが、バジルと居ると違うらしい。


(年相応なのは良いことだ…)


自分がそうではいられなかった為、ドルメックは人のそういった部分に敏感だった。

バジルも、もしかしたら分かっていてやってるのかもしれない。


「…風の質が変わった…。
たぶん、もう直ぐ来ますよ」


パンパスが目を細めて空を見る。
風を読んでいるのだろうか。


「この感じ…。
なんや、もしかしてこの気配…」


クラウンは何か気になる事でもあるのか呟きを漏らす。


「…来たな…」


ベリルが口の端を吊り上げる。


すると、何の前触れも無く重量感のある羽音が聞こえ、風が凪いだ。

上空を見上げると、金眼に真っ白な鱗のドラゴン。
身の丈3メートル程で一般的なドラゴンよりは小さめだが、間近で見る迫力は凄まじかった。


『ヴァラオム!』


ベリルとセシエル、それに何故か、クラウンの声が重なった。

流浪の民二人が、ビックリした様にクラウンを見た。




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