王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
[…それでも、確実とは言い切れんぞ?]
「わかっている。
私達はただ、1パーセントでも確率を上げたいだけだ」
ベリルがヴァラオムの懸念を一蹴する。
重々しく頷いたヴァラオムは、皆を見渡して言った。
[明日の為に聞きたいことが有れば聞くが良い。
答えられる範囲でなら答えよう]
その言葉に、皆一様に考え込む。
一番最初に口を開いたのは、草原の民のパンパスだった。
「貴方の纏う風はとても穏やかだ。
翼を持つ者は風に敬意を払い、感謝するものですが…。
これから討伐しなければならないドラゴンも、風に敬意を払う者でしょうか?」
[君は草原の民だね?
風使いとしては気になる所だろう。
私も、実際に目の当たりにした訳ではないのでなんとも言えんな…。
もし、討つべきか否か迷っているのであれば、共に行かぬ方が良いかもしれんな…。
一歩間違えれば、仲間を危険に晒すことになりかねん]
厳しくも真摯なヴァラオムの発言。
パンパスは首を横に振った。
黒い瞳を真っ直ぐ向けて答えた。
「この討伐に参加した時点でドラゴンを討つことに迷いはありません。
ドラゴンが各地で猛威をふるっているのは事実ですから。
ただ、自然に敬意を示す者には相応の弔いと祈りを捧げる習慣があるので…」
ヴァラオムは成程…と、感慨深げに頷いた。