王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
ヴァラオムは暫し虚空に視線をさ迷わせ、口を開いた。
[記憶する限りでは、君のような大きな子供がいる様には見えなかったが…。
彼は、君と同じ黒髪黒目で、草原の民特有の若草色の装束を見に纏っていた。
腰までの長い髪を結わえ、風になびかせていたのが印象に残っているよ。
見詰める瞳の先に、強い意志の力が見えたものだ]
思い出すように語り出した。
パンパスはそんなヴァラオムを真剣に見詰めている。
他のメンバーは、若干茅の外といった感じで遠巻きに眺めている形になっていた。
その中にいてドルメックは、首から下げられたペンダントを握り締め、そのやり取りを眺めた。
(…俺の探し求めていたものは、その大半が既に手中に収まった。
まだ行方が知れないものも情報提供が約束されてる。
そういう意味では恵まれてるのか…)
生死さえ分からず行方を探す…。
期待と絶望の狭間で揺れ動く感情の波を、年若いパンパスはどうやって消化してきたのか。
それを思い、ドルメックは胸が締め付けられる様な気分だった。
自身が歩んできた道程もあり、他人事とは思えないのだ。
詳細を聞き終え、ヴァラオムに礼を述べるパンパスにドルメックが近付く。
気付いたパンパスが小首を傾げてドルメックを見上げる。
ドルメックは少年の黒髪をクシャリと撫で、今まで見せたことの無い様な優しい笑みを浮かべた。
「親父さん、見付かるといいな…」