王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐



パンパスは一瞬驚いた様な顔を見せ、穏やかに礼の言葉を口にした。


「…ありがとうございます。
絶対に、見つけ出します」


そのまま、目を細めてドルメックを見上げた。

その様子を見て取り、何事かと問い掛ける。


「ん?どうした…」

「貴方の周りには風が吹かない。
肌を突き刺し、身も凍てつく冷風さえも…。
貴方の周りは無だ。
貴方が全てを拒絶する分厚い壁を築き上げているから…」


年若い少年の発言に、ドルメックの心臓が跳ね上がる。

白み始めた朝の情景は穏やかで、見詰められる瞳は真っ直ぐで…。

耳が痛くなるほど静かだった。
何も言えずにいるドルメックに、更なる言葉が紡がれる。


「気付いて下さい。
その壁の向こうでは、穏やかな暖かい風が吹いている。

気付いて下さい。
貴方は一人では無い…。
貴方が一歩を踏み出すのを待っている人達が居ることを…」


向けられる視線が、殊更に痛かった。

純真無垢なその瞳が、闇に覆われたドルメックの心を鷲掴みにする。


(…一歩を、踏み出す…?
ベリルと似たようなことを…)


真っ直ぐに向けられていた視線が、ドルメックの後ろの方を示す。


訝しげに示す視線の方向に向き直る。

勿論、そこに居るのは今回共にドラゴンを討伐すべく集まったメンバー…。


皆、穏やかにこちらを見ていた。




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