王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
一区切りついた所で、二人がドルメックの存在に気付いた。
流石に何事も無かったかの様に去る訳にもいかず、二人に声を掛ける。
「朝っぱらから精が出るな…。
ドラゴン討伐に向けての秘密特訓ってとこか?
あれだけ動いて、すぐに息が整うのは流石だな」
白銀の髪の少女――イースが、真っ直ぐドルメックを見詰める。
髪は乱れ、服も顔も埃で汚れているのに、それでもイースは凛として美しかった。
「貴方に見られた時点で、秘密では無くなってしまったのですけれどね…。
わたくしはイース。
貴方は【宝玉の民】のドルメックさんで合っているかしら?」
小首を傾げて問う表情は、先程とはうって変わって可愛らしい。
少女と女性の狭間…。
最も不安定で、最も目が離せない魅惑的な時期だ。
(…将来が楽しみだな…。
この男も、色んな意味で大変そうだ…)
イースをじっくり観察した後、ガイオスに密かに視線を送る。
いまいち、何を考えているのか読み取れ無い。
取り敢えずはイースの言葉に答えることにした。
「…ああ、俺はドルメック。
呼び捨てにしてくれて構わない。
君は、【唄詠みの民】だったな。
そっちは護衛のガイオス…で合ってるか?」
「…ええ」
「…ああ」
イースが首を縦に振るのと、ガイオスが返事をしたのはほぼ同時だった。