王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
「いくらわたくしでも、意図せずにそんなに遠くまで声を響かせることなんて出来ないわ。
聞き間違いじゃなくて?」
まるで意図すれば出来るというような言い方でイースが否定するが、敢えて突っ込まずにドルメックは答える。
「聞き間違いだったらここに辿り着ける訳無いだろ?
職業柄、静かな中での音には敏感なんだ。
その所為じゃないか?」
何気無く耳を弄りながら答えるドルメック。
「職業柄?何を生業としていらっしゃるのかしら…」
イースが可愛らしく小首を傾げる。
乱れたままの髪が朝日に光った。
思わず手が出ていた。
白銀に光る癖のない柔かな髪を手櫛で鋤いてやる。
ついでに、懐から取り出した布で顔の汚れも拭い取った。
「…埃まみれじゃ、折角の美人が台無しだぜ?」
「それはありがとう。
それでもわたくしの美しさは、多少汚れた位で損なわれたりしませんわ。
それに、まだわたくしの質問に答えて頂いてなくてよ?」
ドルメックの言葉に、イースは不敵に微笑んだ。
ドルメックも負けないくらい不敵な笑みを浮かべ、イースの顎に手を添え上向かせた。
「そうだな、俺の職業は盗賊。
魔石専門の盗賊だ。
君がどんな姿でも魅力的なのは、見ればすぐ判るさ。
美しい物はより美しく…が俺のもっとうでね。
盗賊なんてやってると、価値の高い物が美しくないと居心地悪くてな…」
ドルメックの言葉に反応を示したのは、見詰められてるイースではなくてガイオスだった。