王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
然り気無く、イースに触れているドルメックの手を退けながらガイオスが聞いてきた。
「魔石専門の盗賊?
あんた【宝玉の民】だよな。
じゃ、盗賊[D]か?
【宝玉の民】が仲間の[民の雫]を取り返す為に盗賊になったって噂、本当だったのか」
ガイオスの過保護ぶりに苦笑しながら、肩を竦める。
「流石は流れの傭兵だ。
大した情報網だな…。
後はご想像にお任せってことで」
ワザとおどけた口調でかえしたが、これ以上追求させてやる気は無かった。
雰囲気で察したガイオスは、敢えて追求してはこなかった。
「良いことを思い付いたわ」
それまで大人しかったイースが唐突に発言した。
形の良い唇が弧を描いた。
「ねぇ、ドルメック。
貴方、暇を持て余しているのよね?」
「…ああ……」
嫌な予感がしたが、先程ハッキリと口にしてしまっている為、今更何も言えなかった。
ピッと指を突き付けてドルメックに告げる。
「貴方、わたくしを狙って攻撃しなさい。
分かってると思うけれど、勿論全力でよ?」
「はぁ?」
訳が解らず、思わずガイオスに視線を送った。
ガイオスは頭を掻きながら溜息混じりに口を開いた。
「…すまんな。
こいつはよく、肝心な内容を言わずに話を進める癖があるんだ。
つまり、アンタに特訓に付き合って貰おうということだろう」