王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
困った奴だ…と肩を竦めるガイオス。
イースが冷ややかな眼差しを送る。
「そんなことを言うガイは、わたくしの言ったことをキチンと理解しているじゃない」
「…いい加減慣れてないと、お前の相手はしていられんよ…」
当のドルメックは置き去りに、痴話喧嘩を始めそうな所に割って入る。
「おいっ、ちょっと待てよ…。
さっきも言ったが俺は盗賊だ。
戦闘向きじゃない。
アンタらの特訓には付き合えないぞ?」
眉間に皺を寄せ、困惑気味に主張した。
その主張は、イースによって簡単に却下される。
「大丈夫よ。わたくしの唄で貴方の能力の底上げが出来るもの。
ガイはわたくしが唄うのを守って。
ドルメックはわたくしの唄を全力で止めて。
わたくしはドルメックに力を与える。
それでどこまで出来るか試したいの」
『ガイオスが守ってイースが唄う』パターンに慣れておかなければいけない、とのことだ。
イースの話ぶりは、既に特訓に付き合うのは確定事項のようだ。
しかも、抗う余地も無さそうである。
先の会話でイースが、人の話に耳を傾けるタイプではないということは身に染みて理解していた。
「…確認するが、どんな手を使ってもいいのか?」
こうなったら、イースの気が済むまで付き合ってやるしかない…と覚悟を決めた。