王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
ガイオスも武骨な笑みを浮かべ、右半身を前にして構えた。
「そう来なくちゃな…」
しかしドルメックは動かなかった。
伸長こそ大差ないが、質量は倍近く違う。
不用意に突っ込んで行く様な馬鹿な真似は出来ない。
暫くは睨み合いが続いた。
先に動いたのはガイオス。
瓦礫の崩れた足場をものともせず、一気に踏み出しドルメックに迫る。
(取り敢えずは様子見だ…)
そう思い、ガイオスはドルメックの懐に潜り込むと体重を乗せた拳を放った。
それに瞬時に反応したドルメックは、両手でガイオスの拳を掴む。
勢いに逆らわず、反動で後ろに跳ぶ。
と見せかけ、宙返りの要領でガイオスの顎を狙い蹴り上げた。
「…っと!危ないな!」
「っち、外したか…」
やってのけたドルメックもさることながら、間一髪でかわしたガイオスも中々の反応である。
(長身の割りに身軽だな…。
これは、獲物を使わせたら厄介だ)
間合いをとりつつ、次の戦いに向けた戦術を練る。
軽くステップを踏み、次の攻撃に備えているドルメック。
「そっちからは仕掛けて来ないのか?」
揺さぶりを掛けようと口を開くガイオスに、皮肉な笑みで応える。
「…『後の先』というやつか」
表情だけでそれを読み取ったガイオスだった。
「これだから、戦い慣れしてる奴は嫌なんだ」
心底面倒臭そうに、ドルメックは首を振った。