王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
男二人の様子に、不満気なイースが口を挟む。
「…『後の先』とはどういう意味なのかしら?
わたくしにも解る様に教えてくださらない?」
「読んで字の如く、後に動いて先手を打つ事を『後の先』というんだ」
イースの問いに端的に答えたガイオスだったが、どうにも上手く伝わらなかった様だ。
眉間に皺を寄せ、小首を傾げている。
あくまで視線は外さず身構えながら、ドルメックが捕捉に入った。
「つまり相手に先手を打たせてその攻撃をかわし、相手の体勢が崩れた一瞬の隙を突いて攻撃を仕掛ける。
後から動いたのに、最初の一撃を食らわせれるって寸法だ」
どんな手練れでも、攻撃直後は絶対に隙ができる。
そこを狙う為の戦法なのだ。
「それに、初撃をかわすだけの瞬発力、判断力、何より並外れた度胸が無きゃ使えない戦法さ」
どこが戦闘向きじゃ無いんだ…とでも言いたげな口調だ。
それに気付いたドルメックは、肩を竦めてニヤリと笑った。
「俺は、『負けない戦い方』をしてるだけだ。
あんたとイースが特訓してるのを眺めてて、事前に癖を知ってそこを突いただけさ…」
事も無げに言ったその言葉にガイオスは目を見張った。
ドルメックが見たのは、ほんの4、5手くらいの筈である。
その短時間で、ガイオスの癖を見抜いたというのだ。
「こいつは驚いた。
俺にはどんな癖があるんだ?」
自らも知らない癖に興味が湧き、戦闘体勢を解くガイオス。
それに習いドルメックも楽な体勢をとる。