王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
「まぁな…。
俺の荷車捌きを披露出来ないのが、唯一残念なトコだな!」
「今見てるだけでも充分伝わってるよ…」
テイシンが引く荷車を仰ぎ見て、肩を竦める。
大小様々な荷物や書簡を山の様に積み、一人で引いているのだ。
しかも、荷物の類いは全く固定されていない。
積み降ろしの際は時間短縮になるが、普通の者であれば移動の途中で紛失物が出てしまうだろう。
それだけでも、非凡な才は伺える。
「まだ仕事中なんだろ?
引き留めて悪かったな…」
「気にすんな!
これ位、油を売ったことにもならねぇぜ」
そう言って、テイシンは笑った。
ドルメックはその言葉に小さく頷き、テイシンの横をすり抜ける。
宿舎に向かって歩を進めるドルメックに、背後のテイシンから声が掛かる。
「お互い、生きてまた会おうぜ!」
振り返らず、片手を挙げることでそれに答える。
我知らず、ドルメックの口元は綻んでいた。