王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
上空から見下ろす其処には、まるで隕石でも落ちたかの様に穿たれた巨大な窪地があった。
そしてその中心部に居るのは、勿論今回討伐を命じられてるドラゴンの姿。
深い緑色の身体はヴァラオムの三倍はあるだろう。
その表面は大きな鱗に覆われ、蝙蝠の様な形状の翼を身体に沿わせるように畳んでいる。
頭頂部から尾の先まで、血の様に赤いトサカが並ぶ。
蜥蜴の様な顔はグルリと身体を丸めて腹の上に置かれている。
微動だにしないところを見ると、こちらの思惑通りに寝入っているようだ。
互いに顔を見合わせそれを確認すると、ベリルは2つあるダガーのうち1つを握りしめた。
セシエルに視線を送り1つ頷くと、何を思ったのかヴァラオムの背からヒラリと飛び出した。
「っな?!」
何を考えている!――と言うことも出来ず、眼下に急降下するベリルを見るドルメック。
その横では魔法を籠められた矢を装填し、ドラゴンに照準を合わせるセシエルがいた。
見る間に縮まるベリルとドラゴンとの距離――。
ドラゴンの長い首の付け根に到達した瞬間。
――ズンッ!
[――ッギャオォォァァァーーッ]
この世のものとは思えぬ雄叫びが辺りに木霊した。
鎌首をもたげたドラゴンの顔へ向け、セシエルが矢を放つ。