王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
細長い虹彩を持つグレーの瞳でギョロリとドルメックを見詰めたドラゴンは、牙を剥き出して口角を吊り上げた。
なんとも形容し難いが、どうやらニヤリと笑ったらしい。
[飛ンデ火ニ入ル…トイウノハマサニコノ事ダナ。
ソナタノ保有スル魔力、全テ我ノ糧ニシテヤロウ]
「俺の仲間達は、テメェなんかに手に負えるような生易しいもんじゃねぇよ。
素直にくれてやる気もねぇ!
出来るもんならやってみな!」
敢えて挑発する様な言葉を吐くドルメック。
内心冷や汗ものだが、少しでも自分に気が向く様に、囮としての役割を全う出来る様にとドラゴンを煽る。
[面白イ、人間風情ニ何ガ出来ルカ…。
見セテ貰オウカ!]
ドルメックは勢いよく駆け出した。
戦闘に備え移動し始めたとはいえ、近くにはまだ討伐メンバーがいる。
巨大なドラゴンに攻撃されれば、巻き込まれてしまうのは目に見えていた。
(…少しでも、距離をあけねぇと…)
そう思った瞬間、強風が吹き荒れた。
原因は、目の前上空。
蝙蝠の様な翼を羽ばたかせるドラゴンだ。
[大口ヲ叩イタ割リニハ、逃ゲルシカ能ガ無イノカ?]
「――…チッ!」
思わず舌打ちをした。
しかし、意図とは外れたものの他のメンバーとの距離をあける事には成功した。
(翼が厄介だな…)
未だに降りて来ようとしないドラゴンを見て、ドルメックは眉根を寄せた。