王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐



細長い虹彩を持つグレーの瞳でギョロリとドルメックを見詰めたドラゴンは、牙を剥き出して口角を吊り上げた。

なんとも形容し難いが、どうやらニヤリと笑ったらしい。


[飛ンデ火ニ入ル…トイウノハマサニコノ事ダナ。
ソナタノ保有スル魔力、全テ我ノ糧ニシテヤロウ]


「俺の仲間達は、テメェなんかに手に負えるような生易しいもんじゃねぇよ。
素直にくれてやる気もねぇ!

出来るもんならやってみな!」



敢えて挑発する様な言葉を吐くドルメック。

内心冷や汗ものだが、少しでも自分に気が向く様に、囮としての役割を全う出来る様にとドラゴンを煽る。


[面白イ、人間風情ニ何ガ出来ルカ…。
見セテ貰オウカ!]


ドルメックは勢いよく駆け出した。

戦闘に備え移動し始めたとはいえ、近くにはまだ討伐メンバーがいる。


巨大なドラゴンに攻撃されれば、巻き込まれてしまうのは目に見えていた。


(…少しでも、距離をあけねぇと…)


そう思った瞬間、強風が吹き荒れた。


原因は、目の前上空。

蝙蝠の様な翼を羽ばたかせるドラゴンだ。


[大口ヲ叩イタ割リニハ、逃ゲルシカ能ガ無イノカ?]


「――…チッ!」


思わず舌打ちをした。

しかし、意図とは外れたものの他のメンバーとの距離をあける事には成功した。


(翼が厄介だな…)


未だに降りて来ようとしないドラゴンを見て、ドルメックは眉根を寄せた。




< 43 / 71 >

この作品をシェア

pagetop