王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
[ソチラガ来ナイノデアレバ、此方カラ行クゾ!]
翼をはためかせ、急降下して来るドラゴン。
後ろ足の鋭い爪でドルメックを引き裂こうと狙う。
間一髪、爪の一撃は避けることが出来たが―――。
後に続く尾の直撃を食らってしまった。
―――ズドンッ!
「…ぐっ!ぅっ」
宝玉の防御壁と手甲でガードを固めたにも関わらず、腕の芯まで痺れる様な衝撃を受ける。
生身の状態で食らえば、無惨にも肉塊と化していただろう。
「ドルメック!」
激しい雨でぬかるむ地面に膝を付くドルメックに、ベリルが駆け寄って来た。
[仲間諸トモズタズタニ引キ裂イテクレルワ!]
すかさず第二撃を見舞おうとするドラゴン。
その軌道上に白い影が躍り出た。
鼻先を掠める様に横切り、ドラゴンの動きを牽制する。
やってのけたのは勿論ヴァラオムである。
[そうそう簡単に手出しはさせんよ]
[オノレ、貴様ハ同ジどらごんノ癖ニ、我デハ無ク人間ノ味方ヲスルノ…ッグァ!?]
忌々しげにヴァラオムに向き直ろうとしたドラゴンの身体がビクンと痙攣する。
クラウンの電撃が見舞われたのだ。
「油断大敵やで!」
苛立ちを隠さず今度はクラウンに向くグレーの瞳。
その顔面目掛け、風を収縮させた矢が放たれる。
耳鳴りの様な音を立てて走るそれは、パンパスの放った風切り矢だ。
異変に気付いたドラゴンは器用に身を翻して避けた。
[ドイツモコイツモ小癪ナ真似ヲッ!]
そう叫ぶと、ドラゴンは言葉にならない咆哮を上げた。