王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
その雄叫びを聞きながら、ドルメックはベリルに言う。
「アイツの翼、片方でいい。
付け根の辺りに傷を付けられるか?」
傷みに顔を歪めながらも、ハッキリとした口調。
ドルメックの意図を汲み取ったベリルは真顔で答える。
「出来ない、とは言わない。
だが、翼を使用不可能にする程の傷は負わせられんだろう」
「ドルメックさん!腕っ!」
話してる間に近付いて来たグレードが、アイボリーの瞳でドルメックを診る。
その瞳をサラリと受け流すドルメック。
「問題無い。危ないから下がってろよ」
「問題無い訳ないでしょう!
俺の瞳(め)は誤魔化せませんよ、ヒビが入ってる!」
厳しい顔のグレードが迫る。
溜息を吐き、肩を竦めるドルメック。
「わかってる。だが、今はどうしようも無いだろ。
ヤバいと思うなら痛み止めでも寄越せよ」
更に言い含めようとしたグレードを遮り、バジルが痛み止めの注射を打つ。
「っ!バジルさん!」
「確かに戦闘中の今は手の施しようは無い。
こっちでゴチャゴチャしてる間に、他の奴らが殺られるぞ。
オレ達の役目は、被害を最小限に抑える事だろ!」
普段の緩い雰囲気は微塵も感じさせない厳しい口調だった。
「っ!」
「オレ達は下がる。
ヤバくなったら直ぐに駆け付けるからな!」
バジルはそう告げると、何も言えなくなったグレードを連れて引き下がった。