王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐



雷鳴嘶き、身も凍る様な風雨に晒されながらも健闘する仲間達。

辛うじて致命傷を負った者はいないが、あちこちに打撲や裂傷が見うけられる。


前線に立っていたであろうクラウンの肩口には、ドラゴンの爪痕が刻まれていた。

致死量には至らないが、ドラゴンの爪には毒性があった筈だ。


「クラウン!
君は癒しの民の二人を連れて来てくれ!」


ベリルが告げる。
治療して貰えと言って素直に従うとは思えない彼女だが、こう言われれば断れない。

彼等の元に行けば、放っておいてくれないのは先程実証済みである。


状況判断に長けた、ベリルならではの芸当だ。


「…わーったゎ。ちょい待っとき!」


荒い息を吐きながら、クラウンはグレード達の元へ向かう。


「ヴァラオム!
ベリルを乗せて飛べ!」


ドルメックも声を張り上げる。

その声を聞き付けたドラゴンが、こちらに気付き獰猛に牙を剥き出した。


[我ガ糧トナル為ニ戻ッテ来タカ…。
私利私欲ニ走ル愚カナ人間共ニ相応シイ、無惨ナ死ヲクレテヤロウ!]


力を誇示する様に広げられた蝙蝠に酷似した翼が、風を唸らせた。

濡れて張り付く髪を掻き上げ、不敵な笑みを刻む。


「出来るもんならやってみろよ!
その愚かな人間に翻弄されてた癖によっ!」


少しでも気を引く為の虚勢…。

その効果は、充分過ぎる程だった。




< 47 / 71 >

この作品をシェア

pagetop