王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
[我ヘノ侮辱、死ヲモッテ購エ!]
「パンパス、セシエル!サポートを頼む!」
ギラリと、潰されていない方のグレーの瞳がドルメックを捉える。
ドルメックはアーチャーの二人に叫ぶと、応えも待たずにドラゴン目掛けて駆け出した。
[ワザワザ向カッテ来ルトハ!
フハハハハッ!八ツ裂キニシテクレルワ!]
構わずにどんどん距離を縮めるドルメック。
その手には極細の綱糸鉄線。
ドラゴンには丸腰にしか見えないだろう。
大きく降り被られた腕が、ドルメックを狙う。
寸での所でかわし、ドラゴンの三ツ又の指の一つを糸で絡め取った。
ドラゴンの腕を振る勢いで、糸の絡まった部分に負荷が掛かる。
―――ブチンッ!
[ギャァオォォ…―!]
身の毛も弥立つ叫びが、濡れた大気を揺るがす。
ドラゴンの右手の指一本が、第一関節から千切れ飛んでいた。
ドルメックの口角が吊り上がる。
なるべく、ふてぶてしく見える様に…――。
「クックックッ!…ざぁーまぁ見ろ!」
親指を立てた右手を突き出し、手首を返して下に向ける。
ドラゴンにその仕草の意味が解るとは思えないが、感情を逆撫でる為の努力は惜しまないつもりでいた。
内心は冷や汗ものでしかなかったが…。