王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
(あとどん位時間稼いでられるかな…?)
上空を旋回するヴァラオムとベリルを視界の端に捉えながら、そんな事を考えるドルメック。
数多ある仕事道具の中で、ドラゴンに効果の有りそうな物など殆ど無いのだ。
次はどんな手を使って凌ごうかと思案していると、怒りに身を震わせたドラゴンの呟きが聞こえた。
[コノ、小童ガァ…!]
ドラゴンは、おもむろに頭を反らせた。
見る間に腹が膨れていく。
(…ヤバいっ!)
思った瞬間には、遅かった。
次にドラゴンが顔を向けた時には、目の前は迫り来る炎の渦――。
【宝玉の民】の防御壁では、炎のブレスは防げない。
(ッチ!万事休す…か)
地獄の業火にその身を焼かれる事を覚悟したドルメック。
「危ないっ!」
その言葉と共に、ドルメックの意識を奪ったのは…――。
一面の赤い世界に映える、やっと見慣れてきたシルヴァブロンド。
柔らかい微笑みが印象的な、セシエルの後ろ姿だった。
両手を広げて、ドルメックを庇う様に立ち塞がる。
「―――っ!?――」
焔に包まれる彼を見詰め、全身から血の気が引いていくのを感じた…。