王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
セシエルはふわりと柔らかい笑みを浮かべ、未だ喉元で握られたままのドルメックの手を優しく包む。
「君が死んでも誰も悲しまない…なんて、思わないで?
俺は…。
いや、俺達は、君が死んでしまったら悲しいよ。
忘れないで…。
君はもう独りぼっちではないんだ」
そう言うと、強張ったままのドルメックの手をそっと解いた。
「…テメェ、この戦いが終わったら覚えとけよ?
ぜってぇ、ナシ付けるからな!」
「そうだね。取り敢えずは、目の前の敵を倒そう…。
全てはそれからだ!」
そう話し、未だ猛る炎の先にいる筈のドラゴンにドルメックの視線を促した。
照れ隠しを含むドルメックの悪態を、大人の余裕で受け流すセシエルだった。