王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
「セシエル、パンパスと一緒にヤツを撹乱してくれ!
俺は引き続き囮になる。
後はベリルがヤツの隙を突いて一撃を見舞う筈。
そいつを確認したら全員、出来るだけ遠くに離れろ。
…核石を解放して、ヤツの翼を吹っ飛ばすから!」
セシエルは無言で頷くと、パンパスの元へと向かった。
激しい雨に炎は引いたが、辺りには熱を帯びた黒煙と蒸気が立ち込めている。
(…不意を突くなら、今がチャンス、か…)
ドルメックは目を細め、唇を舐めた。
何が有効な手札となるのか、思考を巡らせる。
(…俺が生きてるってだけでも想定外だろうが…。
ヤツの気を引くにはまだ、弱い。
手持ちは、武器とも言えない代物だしな…)
自分の装備を思い起こし、独りごちる。
悩んだ末、結局出た結論は…。
(盗賊(俺)らしく、ってのが一番やりやすいか…)
ドルメックは懐から先端に鉤のついたワイヤーを取り出した。
鉤の部分を振り子に、ゆっくりとワイヤーを回し始める。
徐々に、回転速度を速めていく。
ヒュンヒュンと風を切る音が鳴る。
ドラゴンが居る筈の方向を睨み付ける。
目の前の煙が薄れてきた。
(………まだ)
ドラゴンのシルエットが浮かび上がる。
(……もう少し…)
ドラゴンと視線がぶつかる。
[…ナッ?!]
驚愕の声が聞こえた。
(………今だっ!)
ドルメックは、勢いの増した鉤をドラゴン目掛けて放った。