王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
ドルメックが放ったワイヤーは、寸分違わずドラゴンの頭部に生える二対の角の一つに絡まった。
ドルメックの予想が外れなければ…―――。
[ッナ!?貴様、何故生キテ?
小癪ナ真似ヲ!]
ドラゴンは焦り、突然絡まったワイヤーを振りほどこうと蝙蝠に似た翼を羽ばたかせた。
勿論、ワイヤーの先に居るドルメックと共に…。
ドラゴンは煩わし気に叩き落とそうとしたが、パンパスとセシエルの援護射撃により失敗に終わった。
ドルメックはワイヤーに引かれ浮き上がった反動を利用し、振り子の要領でドラゴンの頭部に器用によじ登った。
視界の端には、ヴァラオムの背に乗り滑空するベリル。
頭部に乗られたドラゴンは、苛立たし気にかぶりを振る。
[――ック!コノ小ッ童ガッ!]
「はっ!この位置なら、なかなか手も出せねぇだろっ!」
振り落とされないように必死にしがみ付きながら、尚も挑発してみせる。
[人間風情ガッ!我ノ邪魔ヲスルナ!]
より一層激しく首を振り乱すドラゴンは、周りなど見ていなかった。
そしてその隙を見逃すほど、ベリルは甘くない。
するり、とヴァラオムの背から飛び立つと、ドラゴンの片翼のつけ根に切り付けた。
今は陰った月明かりのような金とエメラルドの光がその軌跡を辿る光景は、戦場においてすら、見る者を魅了する。
ハッと我に帰ったドルメックが叫ぶ。
「っ皆、離れろ!」