王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
「ドルメックさんっ!
傷!見せて下さいっ。」
回復したクラウンの背に乗ってやって来たグレードが、アイボリーの瞳を光らせる。
どちらかというと幼く、甘い造りをした顔が険しい表情を型どる。
ドルメックは荒い息を付きながら苦笑した。
言葉を発すると、ヒビの入った肋骨に響いて上手く話せない。
「あんまり…、悠長な事っ…言ってられないだろ?
直ぐ立ち直るぜ、ヤツ…」
「…両腕及び肋骨のヒビ、身体中に無数の打撲に裂傷。
衝撃波に依って内臓に負担が掛かり微量の出血。
更には右目角膜に過剰な圧に依る毛細血管の破裂、それに伴う出血が診られます」
剣呑な表情を崩さず、あくまでも事務的な声音で言い放つ。
更に何か言おうと口を開くのを片手を挙げて制し、緩慢な動作で首を振るドルメック。
「分ぁ〜かってるよ、自分の身体だ…。
言われなくても、分かる。
やれても、あと一回が限度だろうな…」
「っ!何を言ってるんですか!?
これ以上は無理です!」
グレードは目を見開き、信じられないものを見る様にドルメックを見上げた。
「…死にゃしないだろ?
それに、思いついちまったんだ。
あと一回で終わらせられる」
妙に頭が冴えて冷静なドルメックに対し、グレードは癇癪でも起こしたかの様に手を髪を振り乱して訴える。
「死ななくても!
アナタのこれからの人生が全て失われるのと変わらないっ!」
(……羨ましいな…)
まだ会って間もないドルメックの為に、こんなにも必死になれるグレード。
なかなか人を信用出来ないドルメックには、素直に真っ直ぐに相手にぶつかっていくグレードは…眩しかった。
目を細めて、グレードの頭に手を置く。
「お前は、良い医者になれるよ。
きっと沢山の人の命を救える。
…だが、ここでヤツを食い止められなければ、失われる命が増えるだけだ。
分かっているんだろ…?」