王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
唇を噛み締めて見上げてくるアイボリーの双眸が、悔しそうに揺れていた。
それを見たドルメックは非対称の瞳を和らげ、片方の口角を上げて言葉の先を続ける。
「それに…、救ってくれるんだろ?
…俺が望まなくても、さ…」
「っ!勿論!
仮に、いっそ殺してくれという程の状態に陥ったとしても安楽死なんてさせてあげませんからっ!」
一瞬驚いた様に固まったグレード。
次の瞬間には眉根を寄せ、人指し指をドルメックの胸元に突き付けて一気に捲し立てた。
何とも物騒な発言に苦笑が浮かぶ。
「こりゃあ、絶対に致命傷は受けれないな…。
ダメージは最小限に抑えるよう努力するよ」
頷くことでそれに答えたグレード。
やっと落ち着いたグレードのその様子を確認し、傍らで動向を見守っていたクラウンに声を掛ける。
「…待たせたな。一つ、手がある。
パンパスとベリルを呼んできてくれないか?
作戦を説明してる間、他の四人で何とか応戦していてほしい…」
前半はクラウン、後半はグレードに向けた言葉だった。
「えぇよ、任しとき!
ホレ、グレード、向こうまで乗せてったるから早う乗りぃ」
快諾したクラウンは獣化の状態でウィンクという、戦場という緊迫感を見事に打ち砕く珍妙な映像を提供してくれた。
美しい毛並みに、この世のものとは思えない神々しい獣。
それが茶目っ気たっぷりに振る舞う様を目の当たりにしたのは、恐らく後にも先にもこの二人くらいだろう。
固まった二人に再度声を掛け、行くぞと促すクラウン。
我に返ったグレードは、慌ててその背に乗った。