王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
起死回生の策
「…――って流れだ。
最後は俺が、ヤツにトドメを刺す。
上手くいくかは分からない。
だが、消耗戦は明らかにこっちが不利だ。
この作戦が駄目なら、一旦退いたほうがいいかもしれない」
作戦の手順と各々の役割を話終えたドルメックに、その場の全員が言葉も出なかった。
それはドルメックにとって、余りにも無謀で負担の大きいものだったから。
「…あかんやろ……」
俯いたクラウンがポツリと溢した。
金の瞳が、下から睨み付ける様に爛々と光る。
大の大人を軽々と乗せる大きな獣が見せるその様は、背筋をゾッとさせるには充分過ぎた。
思わず一歩後ろに退いたドルメックに、怒りを抑えた低い声で言う。
「あんさん、まだ自分が犠牲になれば丸う納まる思とるん?!
さっきグレードに無茶せん言ぅとったやろ?
素直なあの子を騙すんか?」
クラウンが畳み掛ける様に捲し立てる。
ベリルもパンパスも、二人のやり取りを傍観するしかない。
(…スゲェ剣幕。
返答如何に依っては、あの角で串刺しにでもされそうだな)
そんなことを思いながら苦笑。
軽い雰囲気で肩を竦めて見せる。
「俺は、このメンバーで被害が最小限に抑えられる作戦を考えたつもりだ。
しかも、成功すれば確実にドラゴンを倒せる。
怪我人が少ないほうがアイツ等の負担も減るだろ?」
「せやけどなっ!」
「じゃあ、お前は他に確実にドラゴンの生きの根止める案があるのか?」
ドルメックの紅い宝石が、クラウンの姿を映し込んでいた。