王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
移動の最中、ドルメックはベリルの隣に並ぶ。
泥濘(ぬかるみ)に足を取られながら、ベリルに苦い笑みを向けた。
「悪いな、損な役回りを押し付けちまった…」
「…気にすることはない。こういった事には慣れているのでね」
足場の悪い中、息一つ乱さずに言うベリル。
「私の胸中を推し測るより、君自身が提案した作戦に集中すべきではないかね?
どれ程楽観視しても、五体満足で戻って来れるとは思えん様な無謀な賭けだ」
「…初対面の時もそうだったけど、アンタは本当に俺に現実を突き付けてくれるよな」
理論的で合理的で、常に冷静な分析力で。
そこから導き出される結果は、誰かの為の正しい答え。
(だから、だれもが無条件に信じてみたい気持ちになるのかもしれない)
ドルメックはベリルに視線を送る。
真っ直ぐ、見詰めるその瞳には迷いは無かった。
「…皆を信じてるから、大丈夫だ。
アンタが言ってた、前に進める強さってさ…。
そういうことなんだよな?」
それを受け止めたベリルは無言で唇の端を上げた。
そして何も語ること無く、視線で行く先を促した。
まるで、自分で確かめてこいとでも言うように…。
「全ては終わった後に解るってことか」
ドルメックも口の端を上げ、更に走る速度を速めた。