王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
片翼を失ったドラゴンは、苛立ちを隠しもせず闇雲に暴れていた。
地の底を這う様な唸り声を上げてその巨大な腕を、尾を振り乱している。
眼前で応戦している討伐メンバーのことなど、全く意に介していない。
血走った片方の瞳がギラギラと目当ての人物を探していた。
その人物とは勿論、ドルメック―――。
誇り高きドラゴンが、たかが人間ごときに翻弄され、片翼を吹き飛ばされるなどという屈辱を味わったのだ。
汚名を拭うにはその存在、その者を消す他無い。
獲物を探しさ迷っていた瞳が、満身創痍のドルメックを捉えた。
[其処ニイタノカ…。
ククク…。我ガコンナニ侮辱ヲ受ケタノハ生来始メテダ]
先程までの狂気が嘘のように凪いだ…。
静かな殺意がドルメックを射抜く。
「フッ…。そいつぁ光栄だなぁ。
なんか記念品でもくれんのか?」
震えだしそうになる身体に鞭打ち、精一杯の虚勢を張る。
未だに血涙の流れる瞳でドラゴンを見上げた。
「いい加減こうしてジャレ合ってんのも飽きてきただろ?
お互い手の内もバレてる。
次で決着つけようぜ。
アンタお得意のブレスで来いよ。
それともまたしくじりそうで怖い?」
何処までも煽るドルメック。
プライドを刺激し、他の選択肢を奪っていく。
作戦実行には、どうしてもブレスを誘わなければならなかった。