王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
[ヨクモマダソノ様ナ減ラズ口ガキケタモノダ!
ソナタノ望ム通リ、ソノ身ヲ消シ炭ニシテクレル!]
ドラゴンは苛立たしげにかぶりを振り、巨大な尾で地面を打ち据えた。
衝撃に足元が揺らぐ。
その揺らいだ振動さえ身体に響き、激痛がドルメックを苛む。
(…このまま意識失っちまえたらどんなに幸せだろ……)
そうすればこの恐怖からも痛みからも解放される。
しかし、思いはすれども実行に移す気は更々なかった。
それが何を意味するか知っていたから…。
「ヴァラオム!俺とベリルを乗せて飛んでくれ!」
痛みを堪え、叫んだ。
ベリルがドルメックの側に寄る。
軽い羽音をたて、ヴァラオムが降り立つ。
ベリルの手を借りて背に乗り込んだ。
ヴァラオムは二人の重みを確認すると、力強く両翼を打つ。
[無理はするなよ]
「この状況でそれを言うのかよ?
それこそ無理なんじゃねぇの…」
「そう言うな。君を気遣っての言葉だ」
ベリルがたしなめる。
ドルメックも勿論、解ってはいるのだ。
それでも軽口を叩いていないと不安感が込み上げる。
眼下を見下ろせば、ギラギラとしたドラゴンの瞳が此方の動きを追っているのがわかるから…。
作戦の時が、刻一刻と迫っていた。