王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
激しい強風が、大粒の雨が身体を打ち付け、体温を奪う。
冷えきった身体のなかで右目だけが、燃えるように熱かった。
(…全てはこの一回。
この時に掛かっているんだ)
ドラゴンの頭上で、来るべき瞬間を待ち受ける。
[喰ラウガイイッ!]
声と共に首を反らせ、腹を膨らませるのが見える。
誰もが緊張に身を強張らせた。
ベリルだけが冷静に気の流れを読み、その一瞬を見極める。
ドラゴンが、勢い良く反らせた首を引き戻した。
大きく開いた顋〔あぎと〕が至近距離に迫る。
「…!っクラウン!」
ベリルの合図に、雷を意に操る獣が吼える。
マーブル模様の角が不思議な光を放つと同時に、金の閃光がドラゴンを打ち据えた。
どんな生き物であろうと、電撃を喰らえば一瞬動きが止まる。
―――例えそれが地上最強の存在で在ろうとも。
例に漏れず、ドラゴンもその刻を止めた。
ブレスを放つ寸前の、口を大きく開けた状態で――。
今この一瞬が最初で最後、最大の好機――――。