王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐
「パンパス!」
叫ぶと同時に、ヴァラオムの背から飛び下りる。
刻を止めたドラゴン目掛けて。
草原の民の少年は呼び掛けに行動で応えた。
風のピューマの力を借りて風を収縮させ、ドルメックの身を包む。
彼等の能力の一つ――防風陣――。
風の壁を纏ったドルメックが、ドラゴンの口内へ滑り込んだ。
作戦を知らないメンバーは、その光景に驚愕した。
「!な、なん?!ドルメックさん!」
グレードがドラゴン目掛け走り出そうとした。
バジルがそれを止める。
「バカ、待て!
お前が行ってもどうにもならねぇって!」
「でも、ドルメックさんがっ!」
言い争ううちに、ドラゴンがその刻を取り戻していた。
[フン、血迷イオッタカ。
自ラ喰ワレニ来ルトハ!ハハハハハハハッ!]
ドラゴンは、悦に入ったように嘲笑い出した。
その様子を呆然と見詰めるグレード。
バサリと風を打つ羽音が聞こえ、振り仰ぐ。
「…何とか、上手くいったようだな」
[ここまでは…。
だが、彼にとってはこれからが本番だろう]
そんな会話をしながら、ベリルとヴァラオムが降りてきた。
慌てたようにグレードがベリルへと詰め寄る。
「っベリルさん!
一体どういうことなんですか!?
上手くいったって、何考えてっ!」
「見ていれば…、いや、本当は君だって解っているのではないかね?」
グレードとは対照的な、感情の読めない落ち着いた表情でベリルが呟いた。