crystal love
 

「直ぐに行くわ。」

スケッチブックをバックに詰めて
私は、玄関で待つ
ジェイドを追った。

約束どおりの外出。

画材屋が珍しいのだろうか?

会計をする私の背後で
ジェイドは興味津々と
いった風に
パステルのチョークを
眺めている。

目深に被った帽子に
サングラスの、いで立ちの彼は
ここでも十二分に注目を一身に
浴びている。

「彼、貴方の恋人?」

お釣りを手渡しながら、
店主の女性は問う。

「いえ、彼は、そういう・・・」
「Thank you,lady」

そういう関係ではないと
言いたかった、私の言葉は
頬を指でムニッとつまむ彼に
断たれ、さらに、言葉が
遠慮無しにかぶさった。

惚ける女性をよそに、
紙袋を受け取ったジェイドは
つまらなさげに私を一瞥する。

「何で一々否定する訳?!
お前は?!」

「いや、違うじゃない?!」

「違わなくなったら
どうする訳?!」

「そのときは肯定するわよ!!」

そんなこと無いと思うが
どうも、売り言葉に買い言葉で
食って掛かる私を、彼は
何を考えたのか

ふーん、と、だけ言って
空を仰ぐのだった。

 




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