crystal love
彼の戻る場所
「ディオナ。」
母が呼ぶ。
「はい?」
「ジェスの好きなモノってわかる?」
どうしたというのだろう?
突然。
母の質問の深意を訝しむ。
「やっぱり知らないのね。
食べ物よ?」
母は、クスクス笑って。
「何でも食べるんじゃない?」
何となくそんな気がして
言ってみた。
「ジェスはね。
私が作ったスープが
気に入っているそうよ。」
「へぇ。そうなんだ。」
・・・だから、何だというのか。
言葉を探していると、
胸元にノートを押し当て
られる。
「はいっレシピ。」
「はいっ・・・って
ジェスに直接渡せば
いいじゃない?」
苦笑を伴い言えば。
「ジェスにも持たせているわ。
貴方たち、まともに食事
してないんでしょ?だから。
まあ、貴方は何でも作るから、
正直、エリスの方が
心配なんだけど・・・
貴方を頼りっぱなし
だったから。」
そういって、母は苦笑する。
「今日は、うちにいるの?」
「いるよ。明日の昼には、
彼、メトロに行くから。」