crystal love
 

「切ないわね。

あの子、ムコーじゃ、
こんな素直じゃないのよ。」

それは、もう、思い出せば、
脳の血管が分ブッちぎれる
程度には、問題児。

わがままで。
自己中で。

・・・・・・思い出すと
体に悪いから、
忘れてしまおう・・・。


「ああ、あそこは、ね。」

父は、何でもない事の様に
言葉を続けた。

「ジェスにとっては、
安らげる場所なんて
なかったんだよ。

弱いジェスや、
個人としての彼を
迎えてやれる器が
なかったんだよ。」

父の言わんとする所は
分かる気がする。

「よろいを被って
生きていたんだろうね。
彼は・・・」

言った私に、お前もだよって
父は言い、私は否定する。

妙な一瞬の沈黙の後、
父は再び、口を開いた。

「・・・偶然、
あの男と、
出会ったそうだね。」

「そんなことまで、
言ったの?!
あの子ったら・・・」

「いや、私が聞いたんだよ。」

父の声色が、普段と変わらぬ
モノだったから、
少し、安心した。

 








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