crystal love
ホテルのパティオで開かれた
そのパーティーは、
とても華やかだった。

何よりも、規模に驚く。

「一体、何のパーティー
なんですか?」 

小声で、隣に立つ上司に問う。

「エレナの広告代理店が
主催してるんだ。

ここにいるのは、発注元の商社や
モデルエージェンシーの人間
・・・かな。

僕も、昔、そこに所属して
いたんだ。」


「そうなんですか。
どうりで・・・」

ナイスガイな、訳だ。

いいかけた言葉を飲み込んだ。

ーーーモデルだったんだ。


「どうりで、何?」

言葉の先を問われたが、
何でもないと、お茶を濁した。


こんなところで、通訳するなんて
おもわなかった。


当然、パーティードレスなんて
ある訳もなく、
明らかに単価も違うであろう
スーツスタイルで、隅の方で、
ボスに隠れる様に立っている
訳だけど。

ーーーもう少し、

お洒落してくるべきだった。


大人の気遣いの出来ない自分が、
申し訳ないと思う。

慌てて用意したせいで、
うっかりブレスレットまで、
忘れてしまったし。

ノースリーブのワーピースに
ジャケットを合わせたものだから
チラチラと見える手首のキズ痕が
ものすごく自分でも
気になっていた。

なんとか隠れては
いるけれど・・・

人目に触れない様、
それにも、細心の注意を払わねば
ならなかった。


 

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