crystal love
会場を見渡すと、
一人の40代の男が、
テキパキと周囲に指示を
与えている姿が目についた。

同じ世代でも、
ドジな中年風の自分の生徒と、
随分イメージが違っている。

まあ、それも
愛嬌と捕らえればいいのか、
何というのか・・・

何となく、そんな思考の中
動きを見ていたが、
その横顔に思う所があり、
ハッとして視線をそらせた。


・・・・似てる。

似過ぎてる・・・・。


昔の・・・恋・・人、に。



ずいぶん昔に、愛した男に
その人は、酷似している。


まあ、十年以上の年月を経て
記憶どおりだなんて
あるはずもなくて。

記憶なんて、当てにならない。

「ディオナ?」

ハリスンの怪訝な声に、
はっとして返事を返した。

「おまえ、休みだからって
気抜いてんなよな。」

横から、ジェイドの
厭味が飛んで来る。

わかってるわよ


ぐっと飲み込んだのは、
ボスの硬直した表情を
視界に捕らえたからで。

「ディオナすまん
こいつ・・・口が悪くて。
すまない。」

ロバートからも、
お詫びが飛んできた。


 
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