crystal love
マズイ話題だ−−−
そう思ったときには、
既に遅くて、彼は、
私の左手首をつかみ
不審な表情をした。
バレた−−−−
ジェイドの指先が
その傷痕を、
何かを確かめる様に
動かし・・・
指に触れたそれを見た。
慌てて腕をひっこめたけど
言葉がでてこなかった。
「こら、二人とも、
ついてこいよ。」
急に立ち止まり、
ただ相手の出方を疑うように
黙って見つめ合う私たちに、
ボスから声がかけられる。
「ディオナ。」
再び、歩きはじめた私を
ジェイドが呼び止めた。
「何・・・?」
乾いた声が喉をつく。
「これ、やるよ。」
彼は、そういって、
私の左手首に、
自分の時計をはずして
つけてくれた。
メンズの太い革のベルトが
キズを隠してくれる。
「ありがとう・・・」
何も聞かずにいてくれる
彼の初めての優しさに
胸がじんわりと
温かくなった瞬間だった。