crystal love
「ディオナ、真っ青だぞ。
気分が悪いのか?」

ボスの気遣う声で、
俯いていた顔をあげた。

「いえ、人が一杯で・・・」
苦笑する。


もうすぐ、来場者の歓談が始まる。
そうすれば、通訳しなきゃいけなくて。

その前までには戻ると告げ
少し、ロビーで休む事にした。


会場を出ると、
疲労が、どっとでてきた。


こんな偶然てあるんだ。



元々、彼とは、
母国のレコード会社に
入社した時に知り合って、
付き合うようになった。


誰にも言わないようにと言われ
約束を守っていたのもあって、
誰も私たちの関係は
知らなかった。


あの後、私は退職したから
彼の噂を聞くこともなかったけど。

転職していた様だ。


初対面ね・・・・


もう、今では驚かない。


この程度のオトコであることは
あの時、嫌というほど
知ったから。


キズを覆うジェイドの時計


人気モデルともなれば
金銭感覚の桁も違う様である。

当たり前か。


これ、高いんだよね。

確か、雑誌でスーパーモデルが
宣伝していた。


忘れないように返さねば。


会場に戻ろうと
出入口にさしかかると、
忙しそうに出て来た人に、
当たりそうになり、
咄嗟に詫びた。



 
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