crystal love
「すいません。」

言って顔をあげれば、
苦虫を噛んだような、
表情の彼がいて。

これみよがしな溜息をつく。

「こっち、来いよ。」

そう言って、
客室へ上がるための
エレベータホールのほうへ、
私を無理矢理引っ張っていく。


「イタイってば!!」

言った言葉が癇に触ったのか、
乱暴に壁にぶつけるように、
突き放された。

時計をキズつけない様に
左手首を庇ったが、
それも、不愉快そうな
視線が捕らえていた。


「おまえ・・・

そんなに、俺の事が憎いか?!

よくも取引先まで調べて!
転職先まで調べて!

こんな事してくれるなあ?!
嫌がらせも程々にしろよ?!」


何か、勘違いしてる様だ。

誰が、あんたになんか
会いたいモノかっ

「偶然にきまってるでしょ!
二度と顔も見たくなかったわよ。」

最後は、目も合わせずにいう。

「俺は、なあ。
おまえのせいで、
全部無くしたんだよ

キャリアも!財閥の資産も!
女もっ!全部なっ」


「そんな事しらないわよ
二股かけてたアンタが言うなっ

逆恨みもいい加減にしてっ」

何とか荒げそうな声を 
押さえるよう心掛ける。


 

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