crystal love
 
『もう、ソロソロ、
気が済んだでしょ。』

もう、彼に
付き合う時間はない。
彼の方へ視線をやり言うと
相槌を打って立ち上がった。

一瓶あったワインは、
私がグラス一杯飲む間に、
空になっていた。

若さを感じさせる
飲みっぷりだ。

結構、強いワインで、今更ながら
度数を見て絶句する。

『ねぇ、大丈夫なの?』

ドアの方へ進み出す彼に
思わず声をかける。

『平気だよ。このくらいは。
・・・酔ったって言ったら、
介抱してくれんの?』

サラッと返される言葉。
コイツは、こうやって
オンナを口説くのだろう。

ああ、いや、寄ってくるか。
この美観なら。

『・・・気をつけて帰ってね。
おやすみなさい。』

ドアを開け放し言えば

『ちょっと飲み過ぎた。
もうすこし、居ようかな。』

いたずらな視線を
彼は携えながら言う。

その手に乗るかっ。
大人には、学習能力ってモンが
あるんだから。

『さっき、平気って言ったでしょ。
帰って寝なさい。』

そう促せば、彼は
渋々といったふうに、部屋を出た。

『また明日ね。』


言って、扉を閉め、
さっさと施錠する。



ああ・・・もぉ・・・


今日も一日終わったじゃない。


ドアにもたれたまま
ひとり、ため息を零した。




< 43 / 170 >

この作品をシェア

pagetop