crystal love
クラスブースの小窓からは、
ガタイのいい背中が丸まり
机を覆ってるのが見える。


邪魔しないように
なるだけ物音を立てぬよう
近づく。


「さて。できたかな?」


声をかければ、
あわてふためき卓上を
覆い隠す。

「どうしたの?」

余りの慌てように
若干引きつつ尋ねれば
さも、機嫌が悪そうに

「・・・ノック、した?」
と、怪訝に問う。

一応した事を告げれば、
フーン、なんて
バツが悪そうにうそぶく。


・・・本当は
気づいてる。


ジェイドが覆い隠している
視角に、ボロボロの辞書と
何度も読み返しただろう
ノートが何冊もあることに。


勉強の痕跡とか、努力家な
自分を見せたくない訳だ。

そこは、あえてふれずに
彼に背を向け、先ほどの課題の
歴史について陳述を促した。

彼は、私に伝わるよう
ことばを選び解りやすく
伝える。
私は、形ばかりの修正を加え
彼が、エレナで十分通用する
語学力があることを
あらためて認識していた。


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