crystal love
 

興奮した少年は
こんな風に
感情をあからさまにして
喜ぶんだ。


いや、平素から、彼は
最近の大人じゃみかけない程
喜怒哀楽の表現が豊かだ。


・・・言い換えれば
大人げないとか・・・

言えない事もないが。


ここは、素直に
彼の素直さを褒めてあげたい。


「そういえば、
オーディションって、
どこであるの?」

「メトロポリス。
ディオナの住む都市からなら
前日にエキスプレスで
移動すれば、余裕だよな。
マジで、感謝してる。」


「私は、聞いただけよ。
決断したのは父。
私に礼なんて不要だわ。
そうだ。いつから行く?」

あとで、出発日の連絡を
しなくちゃならない。

「週末便で、予定してる。」

「OK。伝えておく。」

ロバートさんも
電話でもいいから、一言、
うちの両親に挨拶がしたいとか
言って、こっちに向かってる。

もうすこしで来るだろう。


「そうだ、向こうは冬だから、
服装は気を配って?
本当に寒いんだから。」

「ああ、そのつもりだよ。」

「あ。」

段々、母親の気分になってきて
いいかけた言葉を飲み込んだ。

「何?」

「いや、いいよ。」

「気持ちわりぃな。
言えよ。ほら、はやく。」

いや、怒ると思うんだ。

あまりにもしつこいから
その言葉を発したが。


「パスポート、持ってるよね?」


「・・・・」


しばらく眉間にシワを寄せ、
苦笑していた奴だったが。

「あるよっ」


一喝されてしまった。



  
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