crystal love
待つって、誰を?
「待ちくたびれた。
俺、人は待たせても、
待たない主義だから、
堪えたな。」
・・・このオトコ
相変わらずだな・・・
「何か用だった?
そんなに待ったの?」
呆れを飲み込み問えば
一瞬、開きかけた唇を閉じた。
「用事……ね。
待つのは、二時間かな。」
「急ぎ?」
「まあ、タイミングは
大事だよな。」
彼は、クスクス笑う。
・・・コイツ
絶対、用事なんて
ないな・・・
「急ぎじゃないなら、
明日にして。」
ピクピクしそうなコメカミを押さえ、
撤収を促せばーーーー
「そう?せっかく来たのにな。」
なんて、うそぶく。
楽しげに、口元に笑みを
浮かべた彼は、私の頬に
細く長い指をそえ、
目線を私と同じ高さに合わせる。
「じゃあ、『用件』な。
今日は、アリガトね。
ディオナ先生。」
初めて彼から言われた
感謝の言葉に
気をとられてしまって
唇が、あたたかい柔らかさに
ふさがれていると気づくのに
10秒ほどかかってしまった。