crystal love
「閉めるわよ?どうしたの?」

様子を見に行く。

「何か・・・
どうしていいか分からないんだ。
嬉しい・・・。」

そういって、私をふんわり抱き
肩に顔をうずめて、
彼は無言で壁に背を預ける。


・・・本当に、この子は・・・

独りだったんだ・・・。

今更ながらに実感する。

家族という単位にはじめて
所属する、こそばゆさとか・・・
暖かさとか・・・

彼が、経験したかった何かが
現実となって目前にある時、
それについて対処ができない
なんて。

何て、切ないことなんだろう。

そう思うと、自然に彼も
金糸の様な髪に
指を伸ばしてしまう。

「どうもしなくていいのよ。
普通にしていれば。
父も母も、エリスも・・・
『ジェス』個人としての
貴方の存在を認めて
いるんだから。
大切にしているんだから。」

そんな言葉と共に
その髪を指で梳いた。

「・・・ディオナは?」

どう思ってる?

腕に私を抱きとったまま、
髪を撫でられた体勢のままで、
彼は、かすれた声で問う。
 










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