crystal love
人の気なんて知りもしない
目の前のこの男は。
「大丈夫かよ。すぐ酔う癖に。」
呆れた表情で、
こちらを見つめながら
扉を開けて、退室を促す。
「少ししか、飲まないもん。」
彼がからかっているのは
百も承知。
確かに、飲めない私が
お酒を誘うなど、ありえない。
「この間だって、
俺がいなけりゃ
ドアにもたれたまま、
眠ってただろ?」
「そんなことないわよ。
人聞き悪いわね。
・・・て・・あ。」
一歩先を歩くジェイドとは
階段の段差のせいで、目の前に
その端整なマスクを
つきつけられることに
なってしまって。
・・・間が悪いって・・・。
形の良い唇に
視線をもっていけば
キスした事まで思い出す。
自分がけしかけた訳では
ないにしろ
なんだか後ろめたい
気持ちになるのは
何でなんだろうか。
代わりに摩り替えるような
話題も、口をつかなくて、
焦ってくる。
そんな私を知ってか知らずか
この男は、シャアシャアと
言ってのける。
「あの時な。・・・本当は、
抱こうと思った。
止めたけどな。」
えっ・・・?