僕は君のもの
目の前には仁王立ちするクールビューティー。
長いまつ毛に縁どられたネコ目をつり上げ、形の整った眉と眉の間には深いシワ、赤い唇は一文字にきつく結び、艶やかな黒髪をバサッと手で払う。
「居るなら早く出なさいよ!何かあったかと思って焦ったでしょ!」
「いらっしゃい。恵梨香。」
誰もが認めるこの美人さんは大親友の神崎恵梨香。
冷たいし、無愛想だけどとってもいい子。
ま、彼氏ができてから優しくなったけどね。
意外と単純な子なんだ。
「すっごい久しぶりだよね。恵梨香〜。」
「そう?」
「だって高校の卒業式ぶりだよ?」
「数か月前だけど。それ。」
う〜ん…。やっぱりこの性格はすぐには変わらないか。
「それより…、どうなの?新婚生活は。
内野美紀さん?」
その響きについつい笑顔になる。
私、白石美紀が内野美紀となってまだ数カ月。
“内野さん”なんて呼ばれることにまだ慣れない。
なんだか嬉しくて、恥ずかしくて不思議な気分。