僕は君のもの



直お兄ちゃんと一緒なら校門をくぐるのも怖くなかった。



靴箱でも上履きに履き替える美紀のことをちゃんと待っててくれた。



「明日も迎えに行くから。」



直お兄ちゃんはそれだけ言うと一段飛ばしで階段を上がって行く。




途方もなく長く見える教室までの廊下。


直お兄ちゃんの顔を思い出しながら一歩一歩進む。






やっぱり教室は嫌だ。



授業は嫌だ。







だけど、美紀はその日から泣かないで学校に行けるようになったんだ。




だって朝から学校に行かないと直お兄ちゃんに会えないんだもん。



学校に着いちゃったらそこから引き返す勇気なんて美紀にはなかったんだもん。






美紀はあの頃、とてつもなく大きな世界の中で必死に生きていた。



今となればそんな世界、すごくちっぽけなものなのにね。







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